タイトル

第1話 出逢い

「やっぱり......」

 なんだ?
 どんな言葉がでてくるんだ?
 一瞬

「またか。」

 という言葉が僕の頭をよぎった。
 女性から、『やっぱり』と切り出された後は、たいしていい結果にはつながらない。
 それだけ、僕は『やっぱり』という言葉を聞いているというわけなのだが......。

「やっぱり......」

  の後に続いた言葉は、

「ごめんね。 拓朗は優しすぎるよ......。」

 ほらね。
 やっぱり......のあとには、いい結果にはつながらなかった。
 これは、前の彼女との別れのシーン。
 僕は銀行に勤める、元木拓朗。
 自分では意識がないけれど、女の人に言わせたら僕は『優しすぎる』らしい。
 優しすぎて何が悪いんだ?と言いたいところだけど、これが演じるでもない真の自分だから仕方がない。
 きっと世の女性たちは冷たい男には『冷たすぎる』なんて言うのだろう。
 なんて勝手な生き物なんだ?
 その元彼女との別れ以来、僕は女性と付き合ったことがない。

「かれこれ......3年かぁ。」

 たまに前の彼女をのことを

「どうしてるかなぁ。」

 と思いだしたりするけど、別に未練があるわけでもなく、今は特に恋人を作ろうとも思っていなかった。
 たまに合コンなんかに顔を出しても、結局は『いい人』どまり。
 いつもいつも同じことの繰り返しだ。
 別にすぐに結婚したいわけでもないし、休みの日にはサッカーで忙しいし......。
 ...なんて、僕は自分自身に言い訳をつくってばかりいる。

「あっ子供産まれたんだ。」

 ポストに届いている年賀状に目を通しながら、ふとつぶやいた。
 ちょうど1年前のクリスマスに結婚した友達からの、写真つき年賀状。
 こういうのを見ると、少しだけ、ほんの少し『結婚』に対する焦りも出てくる。
 実家に帰れば、親からもいい話はないのかと言われるし、でも、あまりに「結婚、結婚」言われ続けると、はっきり言って「もうほっといてくれ!」と大声で怒鳴りたくなる衝動を抑えるにも大変だった。

「結婚しろって言われてもなぁ......。」

 結婚というものは相手がいなければできないこと。
 今の僕には、まだまだ縁の遠い、年明けだった。

 新年の仕事始めも終わり、今年最初の週末。
 僕は相も変わらずサッカーグラウンドでボールを蹴っていた。

「先輩、今度合コンしません?」

 同じサッカーチームの後輩が言う。

「こないだ、同窓会があったんですよ。 結構同級生の女たち、フリーの子が多くって。今度合コンしようなーって盛り上がっちゃいましたよ。」
「そうだなー。人数足りなかったら呼んでよ。」
「ダメっすよ、先輩。そんなことだから、なかなか彼女できないんっすよ。」

 後輩が少し呆れ顔で言った。
 確かに...。

「秋に行った合コンだって、あんまり乗り気じゃなかったですよねぇ。」

 はい...
 確かに......。

「絶対呼びますからね!来て下さいよ!!」

 なんて無理やり約束されて、僕は後輩主催の合コンに参加することになった。
 でも、無理やりとは言っても、僕にとっては、珍しく今までよりも気合いを入れて臨んだ合コンだった。
 そう、気合を入れて望んだ合コンだったのに、正直見事撃沈したのだった。
 女の子たちはみんな可愛い子だった。
 でも、「何か違う」気がして、どうもノるにノれなかったのだ。
 合コンの帰り際、後輩に「また先輩心ココにあらずって顔してましたね。」なんて言われてしまったけど、仕方ない。
 それでも後輩は「これからも凝りずに誘いますからね。」と言ってくれた。
 僕はそんな先輩思いの後輩に、本当は感謝しなければならないのかもしれない。
 でも...、やっぱりサッカーに打ち込んでいた方が気が楽だなぁなんて、思っていた。

「寒いなぁ。今日はこの冬一番の寒さだってさ。あいつ、こんな日に結婚式しなくても...。」

 横で友達がぼやいてる。

「そんな言ったって、もともと決まってたんだから。」

 そうなだめながらも、鼻水が出そうなくらい本当に寒い。
 こんな寒い日に...の意見に同感......。
 今日は、高校からの同級生の尚也の結婚式。
 久々に集まった仲間とも、話が弾む。

「拓朗、ひしさぶり!お前結婚は?」
「してないよ。健は?」
「オレはまだまだ独身!もっと遊ばなきゃね~。」

 健は昔っからこんな感じ。
 彼女を欠かした時期は見たことないし、いつも女のことばかり考えてる。
 僕とはちょっとタイプが違う人間だけど悪い奴ではない。

「今日の女の子、結構可愛いやついるぜ。」

 そう言って、披露宴の最中もあっちのテーブルこっちのテーブルと、新婦の友達関係に声をかけまくっている。
 僕にはできないことを平気でやってのける、ある意味うらやましくも思えるやつだ。

「なあ、この後の二次会どうする?」

 健が聞いてきた。

 やめとくよ...、あまりの寒さにテンションも上がらず、そう言って帰ってしまおうかとも思ったけれど、やっぱり大切な友達の二次会。
 行くのが暗黙のルールなのだろう。
 ああ、こういう時に、ぶっちぎれないのが僕のいいところなのか悪いところなのか...。

 結婚式が終わり、仲間内での二次会が開催される会場へと僕たちは移った。
 結婚式でのビールが効いたのか、少々酔いが回って気持ちがいい。
 めったに騒がない僕も、「今日はとことん飲んでやろう!」という気持ちになる。

「では、新郎新婦の幸せを祝って、かんぱ~い!」

 二次会の幹事が乾杯の音頭を取る。
 カチン!とグラスが当たる音があちらこちらから聞こえてきた。
 結婚式での二次会だ。
 いろんな人が招待されているから、僕自身面識がない人間も来ている。
 みんなが会場内をウロウロするから、自分の隣にいた人間が数分後には変わっているということもあってもおかしくない話だろう。 

「どこに勤めてるんですか?」

 ふいに、向かいに座った女性から話しかけてきた。

「嵐山銀行です。」

 警戒心がまったくない僕は、あっさりと答えてしまう。

「へー。すごいですねー。」
「すごくないですよ。結構大変なんです。」
「わかりますぅ~。毎日遅くまで仕事されてるんですよねぇ~。」

 職業を聞かれて銀行マンだというと、必ず女性は「すごいですねぇ」と言うんだよな。
 何でだろう。
 もう聞き飽きた感が否めない。
 しかも、こういったぶりっこな女性は苦手だ。
 それからいろんなことを聞いてきたけど、彼女の話なんて右から左だった。
 乾杯から20分くらい経ったころ、ぶりっこ女性が

「こっちこっち。」

 と手を挙げた。

「ごめんね。遅くなっちゃった。」

 そう言ってあらわれた女性は、スレンダーな女性。

「こんばんは。ここ、いいですか?」
「は、はい。どうぞ。」

 運命の人に出会うと人間はビビビって電流が走るって聞いたことがある。
 僕は彼女に会った瞬間、なぜだか静電気が体中に走った気がした。


 そう、この冬一番の寒い日に、ぼくは「運命」に出逢ったのだ...。

第2話 番号交換 ≫

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  • 恋愛心理研究所所長 安藤房子