タイトル

第10話 運命を賭けた夜

 僕と理子ちゃんの間に、予想もしないような別れの訪れ。

 彼女からの
 『もう私たちダメだと思う......』
 というメールを受け取ってから、僕はしばらく考えた。

 その後、何度か電話やメールを送ったけれど、彼女からの反応はない。
 本当は別れたくなかった。
 しかし、今の僕と一緒にいても理子ちゃんは辛いだけかもと思った僕は、それ以来、連絡をすることを断った。

 散々な終わり方...。

 それ以来、僕は無理やりサッカーに明け暮れ、理子ちゃんとのことを考えないようにしていた。
 でも、それは長くは続かなくて...。
 ようやく、自分の気持ちを伝えるべく行動を起こしたのだった。


 新しい年が明けて、理子ちゃんとの出逢いからちょうど一年経ったころ、僕は彼女に手紙を書いた。
 年末から進めていた、この"計画"を実行するために......。

 理子ちゃん
 お久しぶり。元気にしてますか?
 この数カ月、理子ちゃんのことを考えないようにしていたけど、考えないようにすればするほど、駄目でした。
 前にメールを送ったように、確かに僕は理子ちゃんに嘘をついた。
 元彼女との再会は、理子ちゃんが思っているようなことは決してなくて、メールに書いたことがすべて。
 でもそれを知っても、返事がなかったということが理子ちゃんの返事なんだと思う。
 でももう一度だけ、僕の気持ちを聞いてほしいので、待ってます。
 2月14日に、ディズニーシーのエントランスで。

 僕が年末から立てていた"計画"。
 ディズニーシーでは、"バレンタイン・ナイト"という期間限定のイベントがある。
 入手困難なこの数量限定チケットを僕は必死で手に入れた。
 バレンタインデーは、女の子が愛を伝えるイベントだけど、別に男から伝えたっていいと思ったから。
 それに、僕も理子ちゃんも好きなディズニーの空間で、僕の気持ちを伝えたかったから。

 彼女が来るか来ないかもわからないまま、僕は約束の30分前にエントランスに立っていた。
 約束の時間が過ぎるか過ぎないかのうっすらと暗くなった頃、遠くから見覚えのある背格好の女性が歩いてくる。

 理子ちゃんだ。
 僕は、初めて二次会で逢ったあの日、遠くから歩いてきた理子ちゃんの姿をふと思い出した。

 「久しぶり。」

 変わらぬ笑顔で、でもちょっと緊張したような顔で彼女が口を開いた。

 「どうして?どうしてディズニー?」
 「どうしても見せたいイベントがあってね。」
 「イベント?」

 理子ちゃんは、この"バレンタイン・ナイト"を知らなかったようだ。
 チケットを見せて、期間限定のイベントだということを伝えると

 「えっ?ほんと?楽しみ!!」

 緊張気味の顔は、あっという間にいつものはしゃぐ顔に変わった。

 イベント会場の「ブロードウェイ・ミュージックシアター」へ向かいながら、変わらぬ彼女の声と嬉しそうな顔が横にある。
 ただ、変わってしまったのは、僕と彼女の距離。
 一緒に歩いていても、もう昔のように手を繋ぐことはなかった。


 会場に入ると、そこはいつものシアターとは違って、"バレンタイン・ナイト"仕様になっている。
 バレンタイン当日だったので、カップルだけのベタベタラブラブな雰囲気かと思いきや、家族連れが多かったのに心なしか救われた。

 オーケストラの演奏を皮切りに、いろいろなキャラクターが踊ったり歌ったり、時には感動で涙が出そうになるような素晴らしいショーの合間のこと。


 舞台スクリーンの大画面に映る文字。


 "理子ちゃん、来てくれてありがとう 
 やっぱり僕は、理子ちゃんを失いたくない 
 愛してる 結婚しよう 拓朗"
 

 実は僕は、投稿したメッセージがスクリーンに抽選で映し出されるという企画に申し込んでいたのだ。

 映し出されるかどうかは、とにかく当日にならないとわからない。
 何組のメッセージが紹介されるかすらわからない。
 その一か八かに賭けてみたのだ。


 この大画面に映る文字を見た理子ちゃんは、すぐに自分のことだと気付き、驚いた顔で僕と画面とを交互に見ていた。


 すぐに、また楽しいショーが始まったから、メッセージについて、すぐに会話をすることはなかったけど、僕の想いはこの短い言葉で伝えたつもりだった。
 

 すべてのショーが終わった後、"バレンタイン・ナイト"のチケットを持っていないと食べられないという、オリジナルチョコレート付きのストロベリーパフェを食べながら、彼女はまだ興奮冷めやらぬ感じで、話している。

 ただ、あのメッセージに関しては、何も触れようとはしなかった。


 もう時間も遅くなるので、僕は本題を切り出した...。

 「あのね。なんだかんだいっても、やっぱり僕は理子ちゃんに傍にいて欲しい。だからあのメッセージが僕のすべての気持ちなんだ。返事はこれでいいから。」

 そう言って僕は一枚のカードを差し出した。

 「何これ?」
 「チケットについてきたカードなんだ。このカードにメッセージを書いて投函したら、ホワイトデー前後に届くんだって。これに返事を書いて出してほしい。届くまで、待つから...。」


 こんなに短時間で答えを求めるなんて、気が早いかとも思ったけど、短時間でもこれが精いっぱいの気持ちだったから、もう悔いはない。

 お互い見えないところで、メッセージカードを書いて、パーク内のメールボックスに投函した。

 さすがにここから一人で帰すわけにはいかなかったので、付き合っていた頃のように駅まで理子ちゃんを送る。

 ただ...、付き合っていた頃のような会話はなかったけど...。

 別れ際、

 「またね。」

 と言った彼女。
 "じゃあね"ではなく"またね"と別れたことに、僕は少しだけ期待をしていいものだろうか。

 あの再会から一ヶ月がたち、ホワイトデーが近づくにつれ、僕はポストが気になりはじめた。
 
 13日...、こない。
 14日.........、届かない。


 そして、15日。
 運命のメッセージカードが届いた。

 見覚えのあるカード。
 震える手で裏を見ると.........。


 「ありがとう。
  私にも、拓朗君が必要です。
  離れてわかったその優しさ。
  もう二度と離したくありません。
  ミッキーとミニーに負けないくらいの2人でいようね。」

 僕たちは、一度は別れてしまったけれど、その期間は2人にとってなくてはならない期間だったように思う。


 そのおかげで相手の大切さをわかることができたから。

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